by 水尾 千紘 (光物性研究室M2)
これまで電磁波の周波数変換に関して、近赤外領域では非線形光学結晶による高調波発生、マイクロ波領域ではダイオードを利用した周波数変換が行われている。しかし、それらの間の領域であるテラヘルツ波は、同様の手法では高効率の周波数変換が期待されない。さらに非線形光学結晶を用いた周波数変換に関しては、入射周波数と結晶の非線形感受率で変換後の周波数が決定されるため、変換先の周波数を制御することは容易ではない。これらの課題解決策として、本研究では半導体導波路を用いたモードの時間変化による周波数変換を目指した。
先行研究として、電磁波が伝搬している媒体の屈折率を時間変化させる研究が近赤外領域で行われている。この技術を、近赤外よりも波長の長いテラヘルツ波にそのまま応用すると、伝搬媒体が数百倍大きくなってしまい、全領域を屈折率変化させることが困難である。そのため本研究では、半導体導波路の表面の導電率を波長800nmのレーザーにより時間変化させる手法で周波数変換を目指した。この手法では導波路サイズを変更することにより、変換後の周波数の制御もある程度可能である。また、導波路表面への金属加工や、光励起をデザインすることでさらなる応用が期待される。
今回はシミュレーションでの理論確認、導波路デザインの決定を行ったのち、導波路の作成、作成した導波路を用いた周波数変換実験を行った結果、約20%の効率で0.1THz程度の周波数変換が確認できた。これらの結果について報告する。