by 吉田 峻輔 (物性理論研究室M2)
近年ではスピントロニクスの研究発展にともない、固体中の電子に働くスピン軌道相互作用についての研究が多く為されている。そのスピン軌道相互作用の一つとして、二次元自由電子系における空間反転対称性の破れにより、電子の持つスピンが分裂する”ラシュバ効果”が挙げられる。分裂したスピン縮重を電気的に操作できる可能性から、ラシュバ効果を示す物質は新たなスピントロニクス材料として大きな注目を集めており、グラフェンもその一つである。
グラフェンのスピントロニクス材料としての可能性を調査した先行研究の中でg因子の測定に関する実験が為されている。その実験によれば基板上のグラフェンの有効g因子は本来の値(g=2.0023)よりも小さく測定され、その要因の一つがラシュバ効果であると考えられる。
今回のコロキウムでは、ラシュバ効果によりグラフェンの有効g因子が縮小する構造、及びグラフェンの有効g因子を計算によって導出した結果について発表します。