by 種口 翔太(物性理論研究室M2)
正準集団では分配関数を微分することで物理量の期待値を計算することができるため、系の情報は分配関数に集約されているとみなせます。その分配関数は一般化された状態密度とBoltzmann因子の積のエネルギーと磁化に関する和で書きなおせますが、Boltzmann因子が対象を正準集団で考えるときに現れる因子であることから、統計集団に依らない系固有の情報は一般化された状態密度にあると考察されます。従って、対象の系が相転移を持つ場合には、一般化された状態密度にその相転移に対応した特徴が現れると考えられます。このような考察から、系固有の情報である一般化された状態密度のどのような特徴から相転移が引き起こされるかを明らかにしたいというモチベーションが生じます。
一般化された状態密度は解析的に求めることが困難なので通常は計算機を用いた推定によって計算しますが、従来の推定手法は一次相転移を持つ系には有効ではないとされていました。そこで私は、相転移と一般化された状態密度の関係についてより詳しい議論を行うために、一次相転移系においても実行可能な推定手法の開発を目標として新たな推定手法の考案を行いました。
今回のコロキウムでは、考案した推定手法を従来手法と比較しながら説明し、2次元Ising模型に適用した例についてお話します。