熱処理された二酸化ルテニウムナノシートのテラヘルツ応答

by 高井 健太 (光物性研究室M2)
 近年、ナノシートという非常に薄い物質が、その興味深い物性から盛んに研究されている。特に黒鉛を炭素原子単層にはく離したグラフェンは非常に有名である。ナノシートは3次元的なバルクとは異なり、表面の環境やシートの形態(モルフォロジー)により大きく物性を変化させることがあり、強くナノシートという材料を特徴付けている。例えば、鉄セレンのナノシートはチタン酸ストロンチウムに成膜されたときのみ超伝導転移温度が増大する。
我々は、遷移金属酸化物のナノシートである二酸化ルテニウムナノシートに注目した。二酸化ルテニウムナノシートは酸化物でありながらDCで高い電気伝導特性を示し、透明性も有することから透明電極としての応用が注目されている。しかしながら、DC、可視光領域に比べ、テラヘルツ領域での研究は進んでいない。本研究では、二酸化ルテニウムナノシートに熱処理を行い、テラヘルツ波に対する光学特性が変化するか評価した。
また、X線回折実験により熱処理によるナノシートのモルフォロジーの変化が起きているかも調べたので、これらについて報告する。