磁場を含んだ相対論的強束縛近似法


by 樋口 雅彦
 これまでに我々のグループでは、磁場が印加された固体中の電子状態を第一原理的に計算する手法である「磁場を含んだ相対論的強束縛近似法(以下, MFRTB法)」を開発してきた[1-4]。MFRTB法は、従来のHofstadterの手法を含んだ一般的な手法であり、様々な物質に適用可能である。MFRTB法では、磁場効果を最低次の摂動論(パイエルス位相による磁場効果)で取り込んでいるが、理論自身が摂動論に基礎を置いているために、高磁場では適用できないだけでなく、実験室レベルの低磁場においても高い精度が望めない。最近我々は、変分法を用いることで磁場の効果を高次まで取り込んだ形式にMFRTB法を拡張した[5]。これを「非摂動MFRTB法」と呼んでいる[5,6]。
 本コロキュウムでは、非摂動MFRTB法、および本手法をグラフェンに適用した結果[6]を紹介する。グラフェンは大きな反磁性を示すことが知られているが、この大きな反磁性が非摂動MFRTB法によって再現できることを示す[6]。また、高磁場領域で、グラフェンの磁化は特異な磁場依存性を示すことを明らかにした[6]。さらに、グラフェン中の電子の有効g因子は電子スピン共鳴の実験から自由電子のg因子よりも小さくなることが報告されているが[7,8]、この原因についても非摂動MFRTB法の計算結果を用いて考察した結果を報告する[6]。

[1] K. Higuchi, D. B. Hamal and M. Higuchi, Phys. Rev. B 91, 075122(2015).
[2] D. B. Hamal, M. Higuchi and K. Higuchi, Phys. Rev. B 91, 245101 (2015).
[3] M. Higuchi, D. B. Hamal and K. Higuchi, Phys. Rev. B 95, 195153 (2017).
[4] K. Higuchi, D. B. Hamal and M. Higuchi, Phys. Rev. B 96, 235125 (2017).
[5] K. Higuchi, D. B. Hamal and M. Higuchi, Phys. Rev. B 97, 195135 (2018).
[6] M. Higuchi, D. B. Hamal, A. Shrestha and K. Higuchi, submitted.
[7] R. G. Mani, J. Hankinson, C. Berger, and W. A. de Heer, Nat. Commun. 3, 996 (2012).
[8] T. J. Lyon, J. Sichau, A. Dorn, A. Centeno, A. Pesquera, A. Zurutuza and R. H. Blick, Phys. Rev. Lett. 119, 066802 (2017).