by 樋口 雅彦
我々のグループでは、2つのタイプの超伝導の第一原理理論を研究しています。具体的には、
- 粒子数揺らぎを予言する対密度汎関数理論の開発 [1]
- 超伝導転移温度および臨界磁場を予言する電流密度汎関数理論の開発
です。前者(1)に対しては、昨年度のコロキウムですでに紹介をしました[1]。今年度は後者(2)について紹介します。
超伝導転移温度と臨界磁場を同時に予言するためには、外部磁場の印加された超伝導体の秩序変数を適切に記述する理論が必要です。この理論の形式的な枠組みについては、有限温度の「拡張された制限つき探索理論」で与えられます。ゆえに比較的軽快に実行可能です。一方、理論の核心部分でかつ理論の精度に関わる交換相関エネルギー汎関数の開発については、一筋縄でいかない難所があります。今回は、一様な極限でBCS理論の結果を再現する近似形の提案を行いました。コロキウムでは、以上の理論の現状などをお話しします。
[1] K. Higuchi, E. Miki and M. Higuchi, J. Phys. Soc. Jpn. 86 (2017) 064704.