モルフォトロピック相境界近傍のペロブスカイト型強誘電体の構造相転移

by 岩田  先生(名工大)
Pb(Zr1-xTix)O3 (PZT)混晶はペロブスカイト型構造を示し、温度濃度相図上でx=0.5付近に菱面体晶相と正方晶相の相境界が存在する。この温度軸にほぼ垂直な相境界はモルフォトロピック相境界(MPB)と呼ばれる。MPB近傍組成のPZTは、大きな誘電圧電応答を示すことが知られており、実用材料として長い間利用されてきた。Ishibashiは、Landau-Devonshireの自由エネルギーを基にMPB近傍組成の大きな誘電圧電応答の本質が物質の異方性の観点から説明できることを明らかにした。講演前半では、このMPB近傍組成の強誘電体の現象論について紹介する。

一方、Pb(Zn1/3Nb2/3)O3-PbTiO3 (PZN-PT)混晶は、リラクサー強誘電体と呼ばれ、散漫な相転移を示す強誘電体である。現在知られている物質中で最も大きい電気機械結合係数を示す実用材料としても知られている。PZN-PT混晶では、リラクサーに特有な不均一構造と物性の関係が精力的に研究されてきたが、講演者らは、MPB近傍の現象論によって相転移が理解できることを明らかにした。講演後半では、PZN-PT混晶の相転移に関するこれまでの研究を紹介する。