ソフトモード乱流における非熱的Brown運動と揺らぎ定理

by 日高 芳樹 先生 (九州大学)
Lorenzモデルに代表されるように,対流系とカオスは密接な関係にある.しかし空間自由度を無視できない現実の系では,対流構造が時間空間的な不規則 性を示す時空カオスがより重要である.われわれは,時空カオスの「揺らぎ」としての統計力学的性質を,液晶電気対流系に生じる時空カオス中の微粒子の運動 を観測する「非熱的Brown運動」によって調べている.
一方,近年のナノテクノロジーや生物物理学の発達によ り,人間が直接行う操作に対す熱揺らぎの影響が現実の問題になっており,それを扱う非平衡統計力学が発展している.外力によって仕事をなす場合に,揺らぎ によって負の仕事が生じる確率を定量的に表すことのできる「揺らぎ定理」がその成果の代表例である.今回は,時空カオスと熱揺らぎの性質の違いを明らかに する目的で,液晶電気対流の時空カオス「ソフトモード乱流」に揺らぎ定理の適用を試みた結果について述べる.