銅酸化物超伝導体における不均一超伝導

by 土浦 宏紀 先生 東北大学工学系研究科
銅酸化物超伝導体における課題として,擬ギャップ状態,ナノストライプ状態,磁束芯内準粒子状態の素性を解明することが挙げられる.最近の角度分解光電子 分光法や走査型トンネル顕微鏡分光法による観測結果を見ると,これらの状態の背後に共通の長周期構造をもつ非自明な秩序状態が隠れているという仮説を立て ることができる.銅酸化物における長周期構造といえばスピン・ストライプ状態が想起されるが,ここでの仮説には磁気秩序を伴わないものが要求される.本講 演では,まず実験結果を概観したうえで,最近我々が見出した長周期構造をもつ超伝導状態を紹介する.この状態はd波超伝導を基本とし,その位相が4倍~5 倍周期をもって反転するドメイン構造を持つ.この新しい状態とナノストライプ状態等との関連についても議論する.