by 西田 翼(光物性研究室D3)
原子系において観測される電磁誘起透明化現象(EIT)の古典アナロジーとして、ふたつの調和振動子が結合したモデルが用いられる。また同様の系においてAutler-Towns分裂(ATS)と呼ばれる現象も模擬でき、これは同相および逆相モードにモードが分裂する場合に対応する。EITの観測には結合力が小さくなければならず、結合力が強い場合にはモード分裂効果が強く現れる。結合力に応じてふたつの現象の支配性が遷移する様子は、原子系ではEIT-ATS遷移と呼ばれる。メタマテリアル分野においてもEIT模擬が行われていたが、このEIT-ATS遷移に関するはっきりとした報告は無かった。我々は伝送線路モデルを利用して、メタマテリアル系におけるEIT-ATS遷移の研究を行った。ファイバー系における先行研究との比較を行った結果、メタマテリアル系ではどちらか一方の効果だけではなく、両方の効果を取り入れなければならない可能性が示唆された。このような違いが現れる原因は、メタマテリアル系における共振器のQ値が低いためであると、複素平面上における根軌跡の解析で判明した。
今回の発表では、ファイバー系とメタマテリアル系にどのような違いがあるのかという点を中心に報告する。