by 眞榮平 孝裕 先生 琉球大学理学部物質地球科学科
f電子系化合物の研究は、これらが示す多様な基底状態の発見、特に、磁性や超伝導に関連した新しい物性が発見され、新たな局面を迎えている。近年、プルトニウムを含む重い電子系超伝導物質PuCoGa5が発見された。その超伝導転移温度Tcは18.5Kで、これまで高温と呼ばれるf電子系超伝導体のTcがせいぜい2K程度であったことを考えると、f電子系化合物としては驚異的な高温超伝導である。このPuCoGa5など、HoCoGa5型結晶構造を持つ物質群を総称して”115系”と呼んでいる。最近、Ce-115系、U-115系に続きNp, Pu, Amを含む超ウラン化合物Np-115 系, Pu-115系, Am-115系の単結晶育成がおこなわれている。そこで、超ウラン化合物の電子構造とフェルミ面を明らかにするために、相対論的バンド理論を用いて計算を行った。具体的な計算方法は、相対論的線形化APW法、局所密度近似に基づく交換・相関ポテンシャル、セルフコンシステント計算、マフィンティン近似を用いて計算を行った。計算から得られた特徴は、フェルミレベル近傍においてアクチニド原子の5f電子とGa原子の4p電子がよく混成している。また、テトラゴナルの結晶構造を反映して2次元的フェルミ面が形成されている。
今回、HoCoGa5型結晶構造を持つ超ウラン化合物の電子構造とフェルミ面について、バンド理論から得られた最近の成果を報告する予定である。